朱を慕う

 茉咲さんを見ると朱を連想するのは、彼女が情熱的な人物だからでしょうか。
 彼女の特徴は、朱とは対照的な真っ白な髪を一つに束ねたポニーテールなのですが、風になびくその色は彼女自身の魅力を引き立てています。
 茉咲さんの髪が真っ白な理由は、獅子の家系のためです。
 斎藤家は獅子の家系。先祖代々白の髪を受け継いでいます。
 そして身体がとても丈夫で、同時に短命でもあります。
 ですので、茉咲さんは十五歳にして斉藤家の当主を務めています。
 茉咲さんは、定められた運命について不平不満を漏らしたことはありません。
 彼女はとても強くて前向きな方です。私はいつも彼女から元気をもらっています。
 いずれ私も十六夜家の当主となるべく日々精進しているつもりですが、茉咲さんには届きません。
 そう弱音を漏らすと、茉咲さんは「かなめなら大丈夫だ」と、私の背を叩き、眩しいほどの笑顔で励ましてくれるのでした。
 私の役割、ひいては十六夜家の役割は、村全体の統括をすることです。
 村の方々の悩みを伺ったり、有事の際は率先してトラブルの解消を行ったりします。
 そして何より大事なのが、木代理さまのお世話をすることです。
 木代理さまは半年ほど前に初めてお会いいたしました。
 両腕を組み、睨みつけるように私を見る木代理さまは、私と同じような背丈ではありましたが、とても威圧感があったことを覚えています。
 彼女の命令する口調は、おばあさまの厳しい口調よりも耐えられるものでありましたが、とても叶わない願いが多く、彼女の世話をする巫女たちは辟易するのでした。ただ、遥生さんだけは木代理さまのお言葉を意にも介さず自由に振る舞っていました。そんな彼女の自由な姿が少し羨ましくありましたが、私は十六夜です。任された仕事を真っ当としてこそ私には価値があります。
 ただ少しだけ、疲れたとき、ほんの少しだけ、私は茉咲さんを頼ります。
 彼女といるととても安らぐのです。獅子にはそういう力があるのだと茉咲さんは笑います。
 私も彼女のように誰かを安らかにさせる人物になりたいと思っています。
 だから、今日も私は十六夜として、斎灯森のことを想っています。